映画『風立ちぬ』を見ました。エヴァンゲリオンの庵野秀明監督が主人公、堀越二郎の声優をしています。先日、庵野監督のドキュメンタリーを見たこともあって、二郎のセリフ、一つ一つに涙が流れます。
以前、『風立ちぬ』が公開されたときに、宮崎駿監督の密着ドキュメントが公開されました。宮崎駿が、誰を声優にするのか、いろいと迷ったあげく「この感情の乏しい堀越二郎の声は庵野しかいない！」と、庵野監督に決めるわけです。しかし実際は、庵野監督に心のリハビリをさせるために、宮崎駿が庵野監督に声優をやらせたのではないかと、と思うのです。
当時の庵野は、うつ状態のどん底から回復したものの、エヴァを作る意欲、気力が全くなかった状態。そんな中で、「零戦の設計を生きがいとする堀越二郎」を演じさせることで、あるいは声優として現場の雰囲気にふれさせることで、「物作り」「映画作り」の楽しさというものを、庵野に思い出させようとした。
物作りに迷い、迷走していた庵野と、堀越二郎の心のゆらぎが見事にシンクロしているのです！ 庵野を抜擢した宮崎駿の父親的な愛情に、涙がこぼれました。
映画自体が感動的な作品でありますが、当時の庵野の心理状態を想像し、庵野と宮崎の関係性をふまえて、『風立ちぬ』を見直すと、ものすごく奥深い映画に見えてくる。
宮崎と庵野は、カプローニと二郎の関係にそのまま被ります。
ラストシーンの二人のやりとり。
カプロー二「きみの10年はどうだったかね。力をつくしたかね」
二郎「はい。おわりはズタズタでしたが」
エヴァンゲリオンに全てを捧げて、心がズタズタになった庵野監督のセリフ。彼の現実世界とあまりにもリンクしすぎて怖いほどです。
ということで、『風立ちぬ』という作品が、間違いなく傑作であることを再確認したのでした。
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